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操は日雇いの仕事で生計を立てている。
工事現場の警備員。独り身なら十分生きていける。操はたくましいほうではないが、健康体。
ただ、左腕がやや効かない。だから、警備員のこの仕事は合っているのかもしれない。
砂利を積んだトラックが入ってきた。操は手慣れたふうに誘導する。
運転手ががっちりとした腕を突き出し、あいさつした。
現場には外国人労働者が多い。まるで当然のように皆彫りの深い有色人種だ。一目でそれと見分けられる。
操はなぜか、日本人よりも彼らと話すことの方が多い。かつての習慣からか。
とはいえ相手の話す片言の日本語に付き合う程度で、深入りはしない。
実は彼らのなかには、日本語学校に通いそうとう達者に異国の言葉を話せるものもいたが、それでも必要以上に彼らと話し込むことはしないようにしていた。
今日も暑い一日だった。梅雨が明けたばかりだ。待っていたかのようなぎらぎらの日差し。どこか既視感をともなう。
仕事からあがるときスマホを確かめると、着信があった。
『今日暇か? 花龍亭で会おう。返信求む』
かつての上司、伊角洋一からだった。操は少し考えてから、返信した。
『了解』
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