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洋一と会うときはいつも同じ中華料理屋だった。
その店は洋一の事務所の近くにあり、したがって操のかつての勤め先の近くでもある。住宅街のなかにあり、さほど混みあっていないのがよかった。
洋一はかつての上司であるが、同時に戦友のようなものでもあった。
なぜなら、その会社は主に海外の紛争現場を対象として取材をする小規模な通信社であったから。操にとっては洋一は大学の先輩であり、彼を頼って就職したといっても過言ではなかった。
操は学生時代に、戦場ジャーナリストになろうと決意した。
もともとカメラは好きだったが、さらに加えて世界各地の紛争や戦争にいやでも目がいくようになっていた。もしそれらの取材を通して世に訴えることができれば、非常にやりがいのある仕事だと魅力を感じたのだ。
就活の時期になると、操は大手ではなく小回りの利きそうな小規模の通信社をネットで調べ、片っ端から応募した。そのなかに同じ大学の先輩である洋一が勤める会社もあり、若くして中堅社員だった洋一の強い働きかけですんなりとあこがれの職業に就くことができた。
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