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「ね?」なんて言いながらウィンクしてくるバカな砂羽くんを力いっぱい押し退けて距離を取った。
知らない人とキスしておいて、よく平気な顔して私の前に来られるよね。
考えても無駄だからなかったことにしようと思っていたのに、目の前に来られると抑えられなくなる。
いつも砂羽くんのどんな噂を聞いたって、どんな場面を見たって本人に問い詰めたことなんてなかった。それはきっと私の弱さの所為。
人を好きになるということは本当に怖いもので、どんなに嫌いになる要素を見つけたとしても、結局最後は好きっていう感情に全部飲み込まれてしまうから。
───だけど私、もう覚悟してる。
大好きな砂羽くんと別れる、覚悟を。
「さ、さっきの先輩と付き合ったらいいじゃん」
「……見てたの?」
「お似合いだよ。砂羽くんと」
「梨真、」
「わ、私も実は他に好きな人出来たし!」
立ち上がって堂々と、砂羽くんの前に面と向かって言ってやった。
148センチしかない私の最大のコンプレックスであるこの低身長で、どれだけ砂羽くんと対等に対峙しようと頑張ってみてもその差は寂しくなるほど埋まってはくれない。
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