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「えっと、キミは梨真の友達の和美ちゃん……だったよね」
「そうですが」
「ごめんね、こんな場面見せちゃって。ちょっと梨真借りていい?」
「好きにしたらどうですか?本人はものすごく嫌がっていますが」
「うーん。そうみたいだね。でも――、」
「へ!?ちょっ!」
言葉に間を空けた砂羽くんは突然、縮こまって隠れていた私の手を引いて強引に引っ張り出す。
彼の予想外の行為に足が縺れて転びそうになったところ、砂羽くんの胸に飛び込むようにスッポリと収まった。収まってしまった。
「残念だけどもう手遅れだから、さ。今更離してあげられないよ」
「い、意味不明!離れてよ学校だよここ!?」
「最高のシチュエーションだね」
「バ、バカ言わないで!私は砂羽くんと違ってどこでも誰とでもキスなんてできないの!」
「え、じゃあ然るべき場所でならシてもいいの?」
「な……っ!」
砂羽くんの腕の中、どんなに離れようと動き回っても余裕そうな顔で笑う彼。そんな私好みの笑顔を見せたってもう……、ダメだからね。
和美ちゃんだって居るっていうのに、これは叫ぶしかないと思ったところでタイミングよくお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「惜しいね、もうちょっとで梨真を掴まえられるところだったのに」と言いながら投げキッスをして教室へ帰って行く砂羽くんと、ふんっと無視してお弁当箱を片付ける私。
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