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「ほら、帰るよ梨真」
「……砂羽くんと一緒に帰りたくない」
「梨真」
「1人で帰れる!」
「ダメ。こんな時間にこの辺りを1人で帰れるわけない。俺と一緒が嫌ならタクシー拾うからそれに乗って帰って。いい?」
「……」
砂羽くんは卑怯だ。
スッパリと後腐れなく別れてくれたなら、相応に悲しい思いだってするかもしれないけれどそれでもずっとは続かない。
こんな風に中途半端にくっ付いているから、私は終わりの見えない寂しさとずっと戦っていかなくちゃならない。
彼は向いの道路脇に停まっていたタクシーを呼んで「住所は彼女から聞いてください。お釣りは要らないので安全に、送り届けてください」と言って私を後部座席に座らせる。
甲斐甲斐しくそんなことをしてくれる最中もずっと、口を利くことも目を見ることもしなかった。
「では出発しますねー」と言った運転手さんがサイドブレーキを下げた時、砂羽くんは窓越しから言った。
「梨真、詳しい話は明日しようね」っと。
それに応える気もなかったけれど、答える時間すらなく車は走り出す。
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