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◇
砂羽くんが「詳しく話そう」と定めた今日、私は徹底的に彼を避けて1日を過ごした。
A組の砂羽くんとC組の私とでは合同授業でさえ被ることはないし、お昼休みもいつもの中庭ではなく裏庭の隅で和美ちゃんと共にした。
そんな無駄な努力の甲斐あってか、無事に鉢合わせることなく帰りの電車を待っている今。
ふぅっと小さな溜息を吐きながらホームの中に吹き込む風に当てられる。
「―――あ、」
「……」
「松本さんじゃん」
「へ!?」
そんな私の横で突然苗字を呼んだのは、同じクラスのエリちゃんだった。
パッチリとした二重瞼に、キャラメル色の巻かれた髪、綺麗に仕立てられているメイクを見て1番に思い出すのは、昨日のクラブのこと。
「昨日さ、クラブ来たんだって?」
「あ、いや……えっと」
「あたし松本さんとそんなに仲良かった?」
「あの、なんて言うか……、昨日は必死で、その」
確かに昨日のことはエリちゃんに一言お詫びをしなきゃならないかもしれない、とおどおどしている私とは正反対に、立ったまま器用にマスカラを付けている彼女は「あのさー」と言葉を続ける。
「砂羽が彼氏だからってあんまり干渉しない方がいいんじゃない?」
「…え?」
「昨日の砂羽、見るからに迷惑してたじゃん」
「み、見てたんだ」
「あたしら良い雰囲気だったのに、松本さんのこと2階から見つけた瞬間飛んでったよ。砂羽」
「……」
「疎そうな松本さんも見たら分かるでしょ?砂羽はさ、そこら辺の男とはワケが違うんだからさ。束縛ばっかしてると嫌われるよ?」
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