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「……梨真、その人誰なの?」
私を後ろから片手で抱えるようにしてオネーサンと引き離したのは、他でもない砂羽くんだった。
オネーサンと出会うきっかけを作った、彼だ。
私が乗るべき電車はゆっくりと速度を落として、そしてピタリと指定位置に停めて人を降ろしていく。沢山の人が流れ出るように溢れる様を、ホームの端の方から他人事みたいに眺めた。
「ねぇ、梨真。黙ってても分からない」
「……」
「今日1日俺を露骨に避けてた理由はこのため?」
何とでも言えばいい。
浮気してたのかって、俺以外の男の人と会ってたのかって疑ったらいいよ。私がいつも砂羽くんに対してそう思っているみたいに、砂羽くんだって私を見て不安や疑いの心を持てばいいよ。
好きな人の姿を見つけて1番に好きだって言う気持ちよりも先に、今までどこで誰と一緒に居たの?って疑ってしまう悔しさを理解すればいい。
好きだから信用したいし、想っているから不安にさせたくないし、1番近くにいられる関係にある事を大切にしたいのに。
砂羽くんを純粋に好きでいたいだけなのに、そうさせてくれない砂羽くんなんて―――……、もう。
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