01.別れるための決意

44/48
2184人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
「……梨真、その人誰なの?」 私を後ろから片手で抱えるようにしてオネーサンと引き離したのは、他でもない砂羽くんだった。 オネーサンと出会うきっかけを作った、彼だ。 私が乗るべき電車はゆっくりと速度を落として、そしてピタリと指定位置に停めて人を降ろしていく。沢山の人が流れ出るように溢れる様を、ホームの端の方から他人事みたいに眺めた。 「ねぇ、梨真。黙ってても分からない」 「……」 「今日1日俺を露骨に避けてた理由はこのため?」 何とでも言えばいい。 浮気してたのかって、俺以外の男の人と会ってたのかって疑ったらいいよ。私がいつも砂羽くんに対してそう思っているみたいに、砂羽くんだって私を見て不安や疑いの心を持てばいいよ。 好きな人の姿を見つけて1番に好きだって言う気持ちよりも先に、今までどこで誰と一緒に居たの?って疑ってしまう悔しさを理解すればいい。 好きだから信用したいし、想っているから不安にさせたくないし、1番近くにいられる関係にある事を大切にしたいのに。 砂羽くんを純粋に好きでいたいだけなのに、そうさせてくれない砂羽くんなんて―――……、もう。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!