01.別れるための決意

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「ねぇ!泣き虫ちゃん!」 悔しさと苦しさが入り混じって溢れる涙を隠そうと俯くと、やたら元気の良い声で私をそう呼んだオネーサンは自分の携帯を取り出しながら言った。 「俺この後予定があるからこの電車に乗らなきゃなんなくてさ!また話したい事があるから連絡先交換しようよ!」 「ホラ急いで!」と言って私を急かす声に、理解している暇もなく携帯を取り出してQRコードの画面を探した。 電車の扉が間もなく閉まるというアナウンスに、慌てて2人の携帯を重ねた瞬間。 「――ダメ。梨真の連絡先は教えてあげられない」 「あ、ちょっと!返して砂羽くん!」 「俺の目の前でこんな事するって正気?させるわけないじゃん」 「い、いいでしょ別に!返してってば!」 スッと私の携帯を奪った彼からどうにか取り返そうと全力でかかっていくものの、砂羽くんの身長にプラスして手を頭上へ上げられたら届くわけがない。
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