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「………」
「………」
過ぎ去っていった電車は静けさだけを残して、砂羽くんと私の2人きりの間を気まずしていく。
気付かれないようにそっと彼の方を見ると、斜め下を向いて酷く切なそうな表情をしていたから、思わず近くまで行って砂羽くんの口から出てくる次の言葉を待った。
「……梨真は隙がありすぎだよ」
「はい?」
「さっきの人が誰だか知らないけど簡単に連絡先教えるし」
「と、友達に教えるくら――……んっ!?」
「ほら、今だって俺に簡単にキスされてる」
「なっ、いきなり何するの変態!」
本来怒るべきは私のはずなのに、何故か彼は私の隙を突いてくちびるを重ねた後、ふいっと顔を背けて如何にもなお怒りオーラを醸し出した。
何がそこまで気に入らないのか知らないけれど、私の携帯を取り上げるはお姉さんとの会話を邪魔するは……本気で怒りたいのは私の方だ。
オネーサンを使って試すようなことはしたくないから敢えて砂羽くん本人には聞かないけれど、仮にも彼女が他の男の人と2人きりで会ってたらどんな気がする?
砂羽くんは今、私に対して何を想っているの?
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