01.別れるための決意

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あれを聞いた時は泡を噴きそうになったけれど、何しろ私にとって初めての彼氏が砂羽くんなわけだから、『普通』だとか『基準』ってものがイマイチよく分からない。 それを教えてくれたのが、菓子パンをパクッと齧っている和美ちゃん。 彼女は日本の男には興味がないらしく、海外ドラマの影響から国際結婚以外は絶対に有り得ないという、唯一砂羽くんのことを相談できる特別な子。 和美ちゃんから聞いたたくさんの"普通"はどれも砂羽くんと私の間には存在してはいなかった。 例えば手を繋いで帰ったり、放課後は一緒に話したり、寄り道して帰ったり……だとか。 誕生日の日やバレンタインっていう大きなイベントには一緒にデートもしたけれど、記念日なんて祝ったこともないし、そもそも覚えていないんじゃないかなって思っていた。 「……ゲッ。梨真、12時の方向に徳光 砂羽が居るよ」 「え……って、え!?い、今なにしてたように見える?和美ちゃん」 だから昨日、『1年記念日のプレゼントあるんだけどウチに来ない?』と言われた時は本当に嬉しかった。 覚えていてくれたんだって、張り切って砂羽くんの家まで向かったのに。 直前まで他の女の子と居ましたっていう事実をまるでアピールするみたいに痕跡を残しているのだから信じられない。 しかも怒っている意味が分からないって…、私はあの時いよいよ終わりだなと悟った。
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