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「―――へぇ。ただの幼馴染なんだ、あたし達」
「なに?聞き耳?」
「例のあの子の前だと、砂羽ってこんなに大人になるんだぁ」
「……美怜、」
有無を言わせない仕草で身体を這う白く細い手は、腕から肩へ、そして首元へ巻かれる。
「……こういう事するのもダメ?あたし達、ただの幼馴染だから?」
「美怜、やめて。早く病室に戻りなよ」
「やっぱり大人だ」
「俺をどうしたいの?」
どちらとも捉えられる含みのある笑いを響かせた美怜は、そのまま何も言わずに自身の病室へと俺を引っ張って勢いよく閉めた扉に鍵をかけた。
誘っているとしか思えない視線を横目に流して、それでも決して承諾はしない。
「あぁ、分かった。砂羽の"今の彼女"がストッパーになってくれてるんだね」
「……」
「どこまで、彼女で我慢できるの?」
「……悪いのは、美怜だから。やめてって言っても、もう今日はやめてやらない」
キミをたまに、悪魔じゃないのかって思う。
向こうの相手と上手くいかなくなるといつも、俺を求めてきてはいろんなモノを発散させていく。
キミに美しさを持たせたことが、間違いだよ。
「んっ、砂羽……っ。意地悪っ、ね。ふふっ!」
――俺のモノにはならないくせに、俺を離さない。
「砂羽、焦らさないで」
――断れないことを、知っていて。
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