4/4
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 あたしがびっくりしたのは、必ずしもそこじゃないけど。  それにしても、一体、お侍さまも、子守なんてするものかね? とても、女房子のあるようなお人には見えないし。  けれど、確かに赤ん坊の扱いは、堂に入っていた。  お侍は、すぐに坊ちゃんを返してくれて、ぽんぽん、と半べそになってるあたしの頭をなでた。  子ども扱いにされるのは、面白くない。 「泣かしちゃならねえと、かりかりしてちゃあ、いけねえよ。周りの者の気持ちが尖れば――」  声が、不意に途絶えて…… 「おふうちゃん」  お乳母さんが、傘を持って立っていた。 「良かった。雨に降り込められて、往生したろうね」  迎えに来てくれたのは、もちろんあたしじゃ無く、坊っちゃんの心配をしたからだけど、それでも助かった。有り難かった。  それにね、お乳母さんは昼間の係を押っつけたことを、ちょっとばかり負い目に感じているらしく、あたしには優しかったんだ。  振り返ってみると、お侍はいなかった。  変なのと一緒にいたと思われちゃいけないから、その方が良かったけれど、なんだかちょっと寂しい気がした。  こんな雨の中、どこへ消えたんだろう。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!