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 そのまた、翌日――  お侍は、うーんと唸りながら、お供え物の油揚げを眺めていた。 「なにしてんのさ」 「……どうして、生の油揚げなんか、供えるのだろう。稲荷寿司かなんかの方が、ずいぶん狐も喜ぶと思うんだが……」  どうやら、腹が減っているらしい。 「お供え物を、くすねようってのかい?! 罰があたるよっ」 「当たるかなぁ」 「決まってるじゃないか! だいたいっ――」  あたしは、お侍の腰の竹筒を指差した。 「その酒をやめて、(まま)を食えばいいじゃないかよ、ばかばかしい。飯食って、働いて、そんでまた、飯が食えるんでないの。そうでなけりゃ、お天道様に顔向けなんか出来ないんだから」  お侍は、ちょっとばかり困ったような顔をして、残りを確かめるように竹筒を振りながら、「まあしかし」と、言った。 「酒というのはな、米で出来ているんだ。言ってみりゃあ、米の水さ」 「ばっかみたい!」  飯は、食べれば、働く力になるものだ。  酒は、反対だもの。  力も気力も無くなって、ついでに見境も無くなる。  酒飲みは、嫌いさ。 「ばっかみたいっ」  地団駄踏むようにもう一度言って、あたしは駆けだした。 「あ、おい――」  お侍が何か言いかけたけど、無視する。
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