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一夜の恋
前回までのあらすじ
みかのスナックにカズを呼んだサトシ。カズは意外にも歌が上手くて他の客からも拍手をもらう。サトシが帰ろうとするとみかも早退すると言うではないか。期待に胸を膨らませるサトシ。
サトシとみかは連れだって品川ビルを後にする。少しほてったからだに夜風が心地いい。
「やっぱりカレー1杯じゃ物足りないわ。コンビニに寄っていきましょ」
みかがそう言うので、サトシは以前バイトをしていたすぐ近くにあるコンビニを目指す。おでんを山盛りに買い、中華まんを2つ。出入りの激しい業界だ。見知った店員はいない。
レジに立つと懐かしい顔が出てきた。以前バイト仲間だった沢井という奴だ。
「中山さん (サトシの姓)、珍しいですね。もう2年になりますかね」
ニコニコと対応する。
「今どこで働いてますのん?」
「すぐ近くやで。思いもせん仕事してるわ」
「そっちの方は……」
サトシはみかに見えないように小指を上げた。「うらやましいですね。俺なんか女つくる金もないですわ」
沢井は袋に商品を包みながらぼやく。
「なんだか、雰囲気変わりましたね。なんや、凄みが出たというか」
「革ジャン来て髪型変えたからや、はは」
「じゃあ頑張ってください」
「おまえもな」
サトシは少しだけ優越感にひたる。みかとコンビニを後にする。
「どこで食おうか」
「扇町公園にいかない?」
「そやな、見晴らしがいいしな」
二人はすぐ横にある扇町公園に入っていく。石段を登りきると少し見晴らしがいい場所にベンチがあるのだ。普段は野球場として使われている公園だ。
サトシとみかは隣り合ってベンチに腰をおろす。まずはビールで乾杯である。
高台からは天神橋筋にそって流れる夜の道路が見える。普段は気にもしない風景がなぜか煌きらめいて美しい。
二人でおでんをつつく。サトシが大根を取ると、みかが「一口ちょーだい」といって、大根にかぶりつく。サトシは長年付き合っている女のような感覚を覚える。
「みかさんは、何人くらいの男と付き合ってきたの」 サトシが聞きたい事を正直に尋ねると「えー。ざっくり5人くらいかなぁ。高校生時代の深い仲にならなかった付き合いは除いてね」
「あれ、意外に少ないんやね。10人は超えていると思っていたよ」
「まあ、そう。私ね、一人に尽くすタイプなのよ」「結婚とか考えてないん?」
「男の裏側見ちゃうとね……どうしても踏み切れないの。サトシくんはあんまり裏表無さそうね」
サトシは鼻をかく。
「まあ、そうかな。でも引っ込み思案で、慣れてくると、普通に話すタイプかな。だから最初は取っ付きにくい印象があるとよく言われるよ」
それから二人は肉まんを無言で1つづつ食べた。沈黙がその場を支配しても苦痛ではなかった。
「私ね、からっぽなの」
「知ってるよ」
サトシがそう答えると、みかはサトシにすり寄ってきた。明らかにキスを待っている雰囲気だ。
「こういう時は待たせちゃだめ」
夏海の顔が一瞬頭の中をよぎったが、サトシは意を決し、みかと唇を重ねた。
長いキスだった。みかの甘い香りが漂う。サトシはみかの肩を抱いた。
「パチンコ屋に人が沢山集まって来るじゃない?もちろんギャンブル好きの人もいるけれど、ほとんどが私みたいなからっぽな人間が、刺激を求めてやってくるのよ」
「からっぽな人間か……それを言ったら俺もそのうちの一人だよ。なにか定まった仕事のキャリアを積んでいるわけでもなし。パチンコはもうこれ以上勝てる事はないところまで来ているし」
おでんを食べ終えた。サトシがスープを飲み干しカップを横にどけると、みかがすかさずたしなめる。
「それ、後でちゃんと持って帰るのよ。そんなところに捨てちゃだめ」
こういうところはしっかりしている。サトシはみかの過去を知りたくなった。
「みかさんはいつからこの道に入ったの」
「そうねえ、24の時だからもう6年か、あ、年ばれちゃったわね、うふふ」
「いや、予想とジャストだよ。はは」
みかは笑ってごまかす。
「その前は何してたの」
「OLよ。でも短大しか出てないから派遣でこき使われてたの。それこそ生きて行く最低限の給料で底辺をのたうちまわっていたわ。もうあの頃の事は思い出したくもない」
みかがビールをすする。
「やっぱりあれなの、将来は自分の店を持つつもりなの」
「そうねえ、それも選択肢の一つかもね。ママがもう還暦過ぎているから、出来ればあの店を継ぎたいの。でも結婚もまだまだあきらめてないわよ。そっちは?パチプロさんになってどれくらいになるの」
「まだ2年だよ。カズさんについたらいきなり強くなってん。普段は無口な人なんやけどな、酒が入ると『教えたがり』になるいい人だよ」
みかがビールを飲み干す。そして当たり前のようにこう切り出す。
「さ、行きましょ。すぐ近くなのよ、私の部屋」「うん」
みかについて行くとしょうしゃなマンションに入っていく。エレベーターに乗り、5階で降りると中庭に面した所でみかは鍵を出した。
部屋に入るとハーブの香りか、甘い香りが漂う。みかはヒールを脱ぎ、上にあがる。「さあ、リラックスして」
みかが革ジャンを脱がしてくれる。部屋は二部屋。リビングと寝室だ。サトシはソファーにゆっくり座ると辺りを見回す。 リビングはこぎれいに片付けられている。テレビは大きくて、36インチほどか。女性の部屋にしてはこざっぱりしている。
「サトシくん、カップ麺食べる?」
「そうやなあ、まだ小腹がすいてんなあ、貰うわ」
みかはいそいそとカップ麺を作り、サトシに差し出すとバスルームに消えていった。カップ麺を食べながら嫌がおうにも気分は盛り上がる。酔いざましに台所に行き、水をごくごくと飲む。
20分ほどしてみかがバスタオルを体に巻いて出てきた。素っぴんも綺麗だ。その姿を見て、サトシの下半身も臨戦態勢だ。入れ違いにバスルームへ入ると、ボディーシャンプーで頭から足先まで洗う。体をタオルで拭き、素っ裸のままバスルームを出る。
寝室のベッドで、みかがタオルで髪の毛を拭いているところに入り、ベッドに寝転んだ。洗い髪から滴がぽたりと、サトシの顔に落ちる。いい雰囲気である。
ところがみかの背中を見て仰天した。観音菩薩の入れ墨が入っているのだ。みかはその反応を素早く読み取り答える。「この入れ墨でしょう? 前の男がやくざでね。無理矢理入れさせられたの。つらいけど仕方なかったのよ。もう別れて一年以上になるわ。気にしないでね」
「つらかったんやね……」
サトシはそう言うのが精一杯だった。
みかの後ろからがばりと抱きしめる。そして乳房をまさぐる。サトシはその背中をしゃぶり尽くす。「あぁん」 みかが小さく喘あえぐ。
サトシはみかの首を回し、後ろからキスをする。みかは一刻一刻を惜しむかのようにサトシをじらす。
舌を首筋にはわせながらやがて形のいい乳房にむしゃぶりつく。みかは更に大きく喘ぐ。 気がつけば、みかに上に乗られていた。この体勢でやるのはサトシは初めてだった。みかが自分の陰部にガチガチになったサトシのそれを挿入すると、腰を動かし始め、喘ぎ声はさらに激しくなる。
サトシの目の前で揺れる乳房。こうやって眺めているのも悪くない。サトシはその乳房を揉みしだく。
「ああー!」
みかが絶頂に達したようだ。サトシは逆にみかを下にすると思い切りたまっていたものをみかの中に吐き出した。
一夜の恋と知ってても虚しくはなかった。今はただ満足感に浸っていた。
しばらく横たわっていた二人。キスをするとサトシのあそこがまたもや固くなってきた。
「もう一度したい……」
「うふふ、いいわよ。店を出るときピル飲んで来てるから何も心配しないでね」 二人は時に虎のようにぶつかり合い、時には蛇のようにぬめまわしあった。お互いに相手の体を貪むさぼり合う。
夏海とは違う女。夏海とは違う情事の形。サトシは狂ったようにみかの上で上下する。
二回目もすぐに果てた。サトシはさすがに疲れはて、みかの横に寝そべった。 そこへ「ピンポーン」と呼び鈴が鳴った。
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