強者の仮面

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強者の仮面

強者の仮面 少年は強者の仮面をかぶった。 その仮面をかぶることによって、自分の弱さを隠すことができるから……。『自分は強いから』と、事実を受け止めて肯定することができるから……。 少年は思っていた。 人の知らないうちに傷ついていても、わがままだと思えて言えない。本当は素直になりたいのに、なぜだか心から人を信用できない。 あなたは強いから……そう思われているのか、それとも愛情がないのか、自分ではわからないが……それを知りたくもないが、 弱さをさらけ出しても、自分と他の人への対応の違いを見せつけられる。 幼い頃からずっとそうだが、実は、いつも同じように傷ついていた。人にその思いを打ち明けてみても、逆に非難を浴びせられた。 どうやら自分は知らないうちに強がってしまって、本当の弱さを隠しているらしい。 強く生きていかなければならないようだ……。 少年は決意するしかないのだった。本当は泣き虫で、弱虫で、ちょっとのことで傷つく自分を、仮面をかぶって守るために。 この事実を肯定できるように。 『なにを考えてるのかわからない。』そう言われるほうがずっとましだ。 しかし、強者の仮面は代償を払うのだ。自分の素直さと、他人への信頼感を……。 ある時、少年は仮面をはずそうとした。他人に自分が隠してきたことを見せようと決意したのだ。 正直その者に完全に心を許したわけではない。少年にもはっきりとわからないが、誰かに見てほしいとどこかで叫んでいた。 少年はずっとかぶっていた強者の仮面をはずした。かぶって以来、自分でも初めてみる、 本当の自分。 取り払ってみて、少年は初めて気がついた。 深く切れて赤い血が流れていた。 傷は一つだけではない。 ほお、額、まぶた、 ありとあらゆる箇所に ひどいあざや傷があったのだった。
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