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年が明けて社員も全員出席した初の朝礼で、年末の忙しい仕事の成功を聞いていた社員は、そこでさらに大きな仕事をもらった事を聞く。
歓声が上がった。
前の仕事が認められたからこその次の仕事で、それが分かっているからみんなが喜んだ。
「また忙しくなる!みんな、よろしくな!!」
「はい!」
「じゃあ、解散。各自、各チーム、休みの間の連絡確認してくれ。」
それぞれの仕事に戻る。
水菜も高橋と共に秘書室に戻り、挨拶をした。
「年末はバタバタで、挨拶も出来ずで……。お疲れ様でした。
今年もよろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ。本当に年末はお疲れ様でした。
大きな仕事が入るとまたあんな感じですかね?」
高橋もパソコンを起動させながら話した。
「ベターさんとの共同開発が順調に終われば、今回は期限がゆったりだから流石にあそこまで忙しくはないと思いますけど、ベターさん次第かな?」
答えながら水菜はスケジュール帳を手にする。
「行きましょうか?新年最初のお仕事へ。」
「はい。」
高橋もネクタイを締め直して先に階段を上る。
音に気付いて顔を上げた真の顔に真っ先に高橋の顔が飛び込んで、不満気な顔をした。
「なぁんで高橋が先なんだ?」
後ろから出て来て、高橋の横に並んだ水菜はすぐに言う。
「それは高橋さんが紳士だからじゃないですか?」
「え?どこが?これのどこが紳士なんだ?」
スケジュール帳を開けながら、ふうと、息を吐いて、
「私は今日、スカートなんです!先に上がるのは紳士だと思いますけど?
では社長、おはようございます。新年最初のご挨拶、お疲れ様でした。
高橋より今日のスケジュール確認をさせて頂きます。」
と言い、高橋より一歩後ろへ下がった。
この光景も見慣れて来たなぁと思いながら、水菜は真を見ていた。
挨拶もあったから珍しくちゃんとスーツ。
ラフな感じのスーツだけど、威張った雰囲気がなくてよく似合っている。
(さすがというか、ちゃんと似合っている物を選んでいるのよね。
社長…じゃなくて、梨香かな?それとも彼女かな?もうセフレはいないと話していたから、恋人が出来たのかもしれないわね…センスが良い恋人ね、きっと。落ち着いたなら何よりだわ。)
「み〜ずな!おい!水菜!」
「あ、はい。失礼しました。」
ボーっとしていて驚き、返事をした。
「水菜の報告、なんかある?」
「あ、えっと…すみません。ベターさんとの開発状況はどうでしょうか?
大まかにでも予定を立てたいのですが…。」
「今、半分かな?今のところSEの佐藤、幸人と梨香で営業と作業に分かれてチーム組んでるけど、もう一人SE入れて、次の仕事の中盤に入る頃には終わらせたいと思ってる。俺的には一日も早く終わらせたいね。」
「では、社長の予定はこのひと月はベターさんに空けておく、という事でよろしいですね。」
「仕方ないね?」
嫌そうな笑顔で社長が笑う。
「あの…!」
そこまで黙って会話を聞いていた高橋が声を出した。
「びっくりするな。なんだ、どうした?」
「あの、ベターに追加するSE、私では駄目でしょうか?」
「お前?出来るのは知ってるけど…本格的な開発だぞ?」
「社長と佐藤さんがいて、結果、追加のSEはフォローですよね?
下で勉強するにはいいと思いました。」
「確かに…そうだけどな。水菜の負担が増える。」
「ベターにはいつも同席しているのは私ですし、内容も把握しています。
石原さんには次の仕事のスケジュールや取次に専念して頂けます。」
熱心に言う高橋に、真も同意する。
「まぁ、一理あるな。合理的だ。他のチームから連れてこなくても済む。」
「じゃあ……。」
「まぁ、いいだろう。使えないと思えば変える。それで良いな?」
「はい、ありがとうございます。」
積極的な高橋に水菜も少し驚いていた。
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