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社長に連れられて大きなデパートに来た。
まずは紳士服、スーツの店に連れて行かれ、真のスーツを選んだ。
「よし!次は普段着だ。」
水菜の手をいつのまにか繋ぎ、引っ張り連れて行く。
「あの……しゃ、いえ…七瀬さん。手…手は、外して戴けませんか?」
下を向いて、恥ずかしそうに水菜は要求を口にした。
「駄目だよ。人が多い。もっと平日は少ないと思ってた。迷子になる……俺が!困るだろ?」
「しゃ…七瀬さんが迷子ですか?だって行きつけだと、さっき…。」
「うん。店の中を見て歩くのは初めてだ。いつもは奥の部屋に持って来てくれるから、選ぶ必要はそうない。10着の中から選べばいい。
自分で歩いて選ぶ、良いものだな?運動にもなる。」
(どんだけ運動不足だ…。)
という心の突っ込みと共に、それお金持ちだから、と言いたいのを飲み込む。
普段着を選んでくれ、と言われ渋々選ぶ。
「地味なんですよ……。もっとセンスの良い彼女さんとかに選んで戴いたらどうですか?」
自分が地味で落ち込む……少し嫌になる。
「地味じゃない!センスいいよ?水菜は。これも気に入った。
いい物をきちんと、俺に似合っている物を選んでくれてる。
彼女はいないし、優秀な秘書で助かるね。」
(…いないの? 私の所為なのかな?それだと…悪い気がする。)
チクンと胸が痛んだ。
「よし、次は水菜だ。会社の来賓対応用から買いに行こう!」
繋いだ手を引かれる。
「え?ちょっと!いいです!いらないです!」
どんどん引っ張り歩いて行く。
(お金がないのぉ〜〜。買えても1着〜〜。)
心の中で泣いている間に女性服売り場に着いてしまった。
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