デート……ですか?

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「これと、これ!あと…これも。試着ね?」 「え?七瀬さんいいです、これ…。」 「地味な感じを選んだよ?まぁ、綺麗な色もあるけど一色だし、黒とグレーコントラストのスーツなんかお薦めだよ?着て!着ないと帰らないよ?」 ニコニコの笑顔で試着室に押し込まれた。 値札を見て驚く。 「スーツ1着で…こんな値段。1着…何とか今のお給料なら補填できるけど……まとめ買いはきついなぁ。やっぱり腐っても社長か…。」 ため息を吐いて服を脱いだ。 「水菜?開けるよ?」 「あ、はい!どうぞ。」 試着室を開けて、綺麗な水菜がいる。 「似合う!それ凄い似合う!」 グレーのスーツに襟と脇が黒に切り替えてある。すこしタイトで線が見えるロングスカートは、グレーの裾の端に少しだけ三角の黒の切り替えが入っていて、そこがスリットの様になっていた。 「サイズはいい?」 真に聞かれて反射的に答える。 「はい、着心地も凄く良くて…。」 「他は一色だからいいね。すみません、残りも買います。」 「え?ちょっと、駄目です。」 「水菜は早く着替えて?次に行くよ?」 着替えている間に、カード一括払いとやらでお会計は済まされていた。 真の片手に今買った紙袋。 水菜の手を左に握り、スタスタと引っ張って行く。 「あの?そういえば……七瀬さんのお買い求めの服は?」 「あ?ああ……配達頼んだ。水菜のも配達出来ればもっと買うけど………そうか、俺の家に配達して貰えばいいのか…。」 思い付き、嬉しそうに真が言う。 「あの、……あのぉ!」 手を引き離して立ち止まる。 真はキョトンとして水菜を見た。 「あの、困ります。いくらお給料を戴いていても、普通は半年に一着程度だと思います。普段着もそれほど買いません。まして七瀬さんに買って頂く事は筋が通りません!」 「筋?忙しい中戻ってくれて、自腹切ってみんなに差し入れしてくれて、気分良く出勤出来るように無償で掃除してくれて、俺の我儘に付き合ってお弁当を作ってくれている。これだけ聴くと水菜は社畜だよ? マゾだね?決定だ。」 真の言葉に、目が点になった。 「だ……誰がマゾですか!違いますよ!」 思いっきり否定した。 「ぶっ……。」 吹き出して笑い、真は楽しそうに言う。 「マゾじゃないなら受け取ってよ。今日も付き合ってもらった。 一人じゃ来ない、面倒だし。良い運動になった。久し振りにデートも楽しめる。 中学生以来かな?ゲームばっかりしてたからさ。いつも三人でいたし。」 諦めのため息を吐き、水菜が歩き出す。 手を取り、繋いで話を続けた。 「手を繋いでデートが理想何ですか?繋がなくても良いですよね? 二人とも大人ですよ?」 「デートは繋ぐものでしょ?あとさ、そんなに気になるなら、お弁当よろしくね?すっごい今の楽しみになってる。 昼に水菜が秘書としてではなく、普通に話してくれるのも楽しい。」 普段着を買い、そのまま最上階のレストランに昼食に連れて行かれた。 最早、抵抗する気力も水菜にはなかった。
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