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「さすが…石原さん。お見通しって感じですね。起こしますか?」 高橋が小さな声で聞く。 「寝かせてあげたい気もしますけど…。」 スケジュール帳を開いて水菜はため息を吐いた。 「無理ですね。朝一でSEとシステムチームとの会議があります。 仕方ありません。起こしましょう。」 「社長!朝です!起きて下さい。スケジュール確認をしますよ!」 高橋が揺らすが起きない。 今度は水菜が揺らす。 肩に手を置いて、小さく揺らした。 「社長?申し訳ないですが、朝です。起きて下さい。」 「う……ん。もう少し…。」 はぁ…とため息を吐く。 「高橋さん、コーヒー入れて来て頂いていいかな?」 「いいですけど、社長は石原さんのコーヒーじゃないと…。」 「出来れば、だから。今は緊急だし、起きても目は覚めないと思うから直ぐにコーヒーを飲ませたいの。」 「分かりました。ブラックでいいですね。」 「うん、よろしく…。」 高橋が階段を下りるのを見送る。 後ろに回り、真を揺らす…思いっきり! 「ん?水菜?」 「まだ寝ぼけてますね?起きて下さい!」 「んーー何時?」 「アプリを頑張ったのは素晴らしいですけど、今日も予定があります。 調節して仮眠時間を取りますので今は起きて下さい。」 「分かるけど……めが、あかない。」 耳元に近寄り囁く。 「今日もお弁当ありますよ?私のスーツは社長の選んだピンクですけど…。 起きないならすぐに着替えましょうか?」 ガバッと起きた。 後ろを振り向く。 「あ、ほんとだ。ピンクだ。思った通りだ。水菜似合う!」 水菜は少し呆れ顔で正面に移動する。 「ありがとうございます。お目覚めですか?」 「もう、バッチリ。」 高橋が階段を上がって来て、起きている社長に感動する。 「凄い!起きてる。あ、コーヒーです。」 「飲みながら、本日のスケジュール確認をさせて頂きます。」 いつもの様に水菜は一歩後ろに下がった。 ニコニコしながら、真は水菜の姿を目で追っていた。
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