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階段を降りて秘書室に戻ると、真っ先に高橋に報告する。 「社長、仮眠に入られましたので、上には行かないようお願いします。 予定では13時までです。起こしに行きます。14時から山岡主任とお約束しています。」 「はい、じゃあ、今のうちに頼まれていたシステムまとめて来てもいいですか?」 「はい。新しいシステム開発の予定ですか?」 「ええ、ベターがそれどころじゃなくて、うちに回して来ました。 頼める筋じゃないけど頼むのも筋な気がすると。 新しいベターを牽引される方は、中々の人間性とお見受けしました。」 「それは社員にもいい事ですね?でも決して、岩永さんの人間性に間違いがあるわけではありませんから、何処へ行っても言わない方がいいと思います。」 微笑んで水菜が言うと、高橋は素直に納得した。 スケジュールを組み立ててから、料理サイトの会社に連絡を入れる事にした。 こちらも新しい仕事の始まり。 始まりはいつも、ワクワクする高揚感、期待感、ドキドキする不安と心配で出来ている。 (これも…七瀬さんからしたら、普通、の事なのよね…。) くすりと笑い、水菜は電話を取った。 13時…社長室のプライベートスペースの扉を少し開けた。 深呼吸してから水菜は中を覗いた。 ベッドに潜り込んで、丸くなった真が気持ちよさそうに寝ていた。 大きく扉を半分開けてそろそろと遠慮気味に中に入った。 「社長…お時間ですが…。」 普通の大きさの声で話しかけた。 「ん………。」 少し動いてから、5分経過しても動きはなかった。 「七瀬さん!お腹空いてませんか?このままギリギリまで寝ていても構いませんが、お弁当は高橋さんに差し上げますね?」 と、水菜は少し大きな声で話した。 ガバッと起き上がり、 「駄目だ!それは俺の弁当だ!」 と言い、パタンと倒れた。 「起きれます?」 倒れた真を上から覗いた。 「水菜が起こしてくれるなら…。」 「手のかかる社長ですね……。ほら、よっこいしょ!」 手を引いて座らせた。 「お昼はどうされますか?14時でお約束していますので、こちらに参りますが、あと、50分あります。着替えますか?」 「いや、うちの人間だから普段着は見慣れてる。これでいい。 弁当食べていいか?」 ベッドから出てフラフラと机に歩いて行く。 後について行き、扉を閉めて、お弁当を机の上に置いた。
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