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「水菜、食ってるか?」
「食べてますよ。どうしてタコパなんですか?」
「だってこれ自動だぞ? 面白くないか?」
「だからって、こんなに買います?」
「これ、今日ラストにじゃんけん大会して勝った順に持ち帰ってもらうんだ。俺も欲しいから参加するし、まぁ、全員強制参加だけどな。」
会話をする真と水菜の視線の先には、ゆっくりとたこ焼きが回る自動たこ焼き機があった。
10台、真ん中に置かれた大きなテーブルにたこ焼き機は置かれていて、飲み物も沢山置かれていた。
「よく考えますねぇ。いつも七瀬さんは楽しそうですね?」
「楽しいよ?何でかな?水菜がいるだけで楽しいんだ。」
水菜は額をポリポリとかいた。
「私は一人がいいんですけどね?」
少し困った様に言う。
「無理だな。俺は水菜の名前を呼ぶし、返事しないとしつこく呼ぶ!
辞めたら家まで行くし、次の仕事先にも行く!結婚するなら相手の顔を見に行くし、納得いかなかったら邪魔しに行く!だから水菜は一人にはなれない。」
「偉そうに言う事じゃないですねぇ…。」
くすくす笑い、七瀬の口に半分に切ったたこ焼きを放り込んだ。
「あっ…中……あふ、はふ…チーズだ。」
「あ、本当だ。明日は四人で食事ですね。
どこに行くか梨香から聞きました?」
「ひや?ひいてない。あいつ、また俺に奢らせる気だ。」
たこ焼きを飲み込んで、真が言う。
梨香の産休前に四人で食事に行く約束をしていた。
「すっごい高いとこだったらどうします?割り勘にしましょうか?」
ふーふーして、半分のたこ焼きを水菜は口に入れた。
「梨香の分は幸人が払えばいいさ。お腹の子の分も食べるのだし。
水菜の分は俺が払う。払いたい。絶対!」
それを聞いて水菜はまたくすくす笑った。
未だ告白らしきものはないが、それっぽい事は1日一度は言っている。
最初こそ赤くなっていたけど、今はもう普通に言う。
返事を要求された事は一度もない。
水菜から何か言う事もない。
それでも文句はない様で、付き合おうとか、具体的な言葉は言わない。
それが有難かったり、もどかしかったりする事も水菜は言わないで、温かい心遣いに癒されていた。
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