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「おはようございます。」
何事もなかったかの様に、階段を上がった所で挨拶をした。
「わぁ!……お、おはよう……。」
自分の椅子に座っていた真は驚いて声を上げた。
(べ、別に俺は悪い事はしてない。してないぞ?)
言い聞かせながら挙動不審になる。
社長の机の前、1メートル離れた正面に立ち、水菜は挨拶をした。
「今日から勤めさせて頂きます。石原です。
慣れない間はご迷惑をお掛けする事もあるかと思いますが、よろしくお願いします。では、本日のスケジュールを確認致します。」
淡々と、水菜はスケジュールを読み上げて行く。
その声を聴きながら、スケジュールが真の耳からは抜けて行く。
(やっぱ、綺麗だよな。ただのワイシャツなのに可愛く見えるし、ローライズでもない普通のズボンだけど、スタイルの良さは分かるな。
スカートとか履かないのかな?)
「で、よろしいでしょうか?社長?」
「あ、はい。」
「では、失礼致します。」
「えっ?」
呆気なさ過ぎて思わず声が出た。
水菜は足を止めて振り向いた。
「何か?」
(いや、あるでしょう?絡まれた文句とか、水でクリーニング代もおかしいし、今朝の女とか…。え?スルー?)
「社長?何もなければ業務に戻りたいのですが?初出勤で教えて戴く事が多いものですから。」
「ああ、うん。いいです。」
「では、失礼します。」
向きを変えて階段を降りて行った。
「む、無表情……。冷たい…女。あの店で笑ってたくせに…。」
呟いて真は机に顔を伏せた。
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