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階段を上がり、机の正面に立った。
「何処の確認でしょうか?」
「昼のビジネスランチって場所何処?」
不機嫌そうな顔で聞かれる。
(朝、1日のスケジュール確認で話したのに…。)
と、思いながらもすぐに答えた。
「隣のビルのマリクーレキッチンです。副社長とベターの社長が同席されます。」
「ふ〜ん、分かった。もういいよ。」
「し、つれい…致します。」
軽く頭を下げて階段を降りた。
降りた所で梨香に聞かれ、そのまま答えると梨香は不思議顔だ。
「そんな事、いつも興味なしで幸人に連れて行かれる感じなんだけど……何処の店で食べても味なんて変わらないって人だもの。
珍しいわね? ま!兎に角、今の感じで。朝はメール処理を。
私もしてくるから…。いつでも声を掛けてね?」
「はい、ありがとうございました。」
それから三日間、水菜は仕事を覚える事に必死で社長の飲み屋事件など頭にはなかった。
何故か社長が大した用でもないのに、呼び出す事が忙しさを加速させた。
『ピーピー』
嫌な顔をしてからボタンを押す。
「はい。」
『メールの量が多くないかな?見に来てよ。』
「そ…」
ブツッ………。
返事をする前に通話を切られる。
仕方なく階段を登り、社長の前に行く。
『ピーピー』
「はい。」
『今日の15時、予定ないけど?』
「だ、」
ブツッ………。
また階段を上がる。
この三日間、これの繰り返し。
(何のためのスケジュール確認なのよ!)
自分の仕事が進まない。
ただでさえ慣れていないから自然に残業。
18時に階段を下りて来て水菜を見る。
「まだ仕事?無能な人ほど長く仕事するよね?合理的じゃないんじゃないの?お先に…。」
肩をポンポンと叩いて、部屋から出て行く。
「だ!誰の所為だ!!」
思わず大きな声を出した。
隣の部屋のドアが開く。
恥ずかしくなり謝る。
「申し訳ありません。」
「ううん、いいの。」
部屋から出て来て社長が出て行った壁を叩く。
「これね?一応、防音で色も変わる。ガラスにもなる。
だから外には聞こえない。で、私達の間の壁は普通。
少し大きな声でやり取りも出来る。
元は社長と副社長がここ使ってて、お互いの仕事しながら大きな声で話したりしてたの。それを外に聴こえない様に防音にしたから。」
「外が見える様に出来るんですか?」
「そう。社員が仕事してるか見る為と、内線が入った時にガラスにして丸とかバツとか合図出してた。昔の話だけどね。私たちは基本、触らない。
この壁のまま。大事なメールもあるし見られているとやりにくいからね。」
「じゃあ、今の文句は?」
「大丈夫。社長にも聴こえてない。安心して?」
梨香の言葉に安心する。
「でね?逆に言えば、私の部屋にはこっちのピー音位は聴こえるのね?
慣れてないから水菜のミスが多いのかなって思っていたのだけど、どうも回数が多いと思うの。私から聞いてみようか?」
「あ、いいえ。仕事ですから。きちんと対処します。」
「そう?困ったらいつでも言ってね?」
梨香はそう言うと部屋に戻って行った。
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