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オフィスから出て、一階のロビーまで降りる。
未だに電車の改札みたい、と考えてしまう警備のゲートを社員証を当てて通過する。
その時、受付に綺麗な女性がいるのが目に留まる。
パスを受け取っているみたいだった。
足速に真っ直ぐ出口に向かって歩いた。
(社長として、仕事には真摯だし真面目で心配になるくらい夢中になる。
そういうとこは信頼できるし尊敬する。でも…女性でストレス発散とか、道具の様に使うのは相手がいいと言っていても理解出来ない。
ずっとここでは働けないなぁ…。)
仕事に不満はない。
それでもここに居続けたら、男性不信は永遠に治らない気がした。
ビルを出て買い物して帰ろうと右の道に進むと、前から男性が声を掛けてきた。
ベタークリエイティブという会社の社長で、エタエモと同じ若手起業家。
うちの会社とは一年程共同開発などをしている。
「石原さん!」
手を振り駆け寄ってくる。
2ヶ月ほど前から会議が終わった後、さり気なく肩に手を置かれたり、お茶に誘われたりしていたので少し苦手な人種だ。
「こんにちは。」
お辞儀して、立ち止まる、無視は出来ない。
「もしかしてもう帰るの?まだ16時過ぎだけど?」
腕時計を見て言う。
「はい、今日は早目に許可を頂いて。」
「何か用事?」
「私用ですが、ベターさんはお忙しそうですね。
社長もお身体にはお気を付けて下さいね。お時間、取らせましたね?
すみません、失礼します。」
会釈して通り過ぎようとすると腕を掴まれた。
「あ、ごめん。少しでいいから、そこでお茶とか駄目かな?」
「すみません。急いでますので…。」
笑顔で断る。
「そう…あ、じゃあ、時間ある時教えて、これ、俺の個人アドレス。」
手帳を出して、慌てて書いて破って無理矢理、手に握らせた。
そのまま急いで走っていった。
耳が赤いのが見えた。
(アドレス…会社の繋がりがあるから捨てるわけにも行かないし…。悪い人ではないのよね…。)
ため息を吐いて家に帰った。
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