6776人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「午後はずっと開発チェックだなぁ。」
エレベーターホールで真は嫌そうに呟いた。
「社長の開発するアプリは便利だから好きです。お年寄りにも分かりやすい。
次も期待しています。」
「あ、ああ…。うん、頑張る…よ。」
優しい顔付きで言うので、真はポカンとしていた。
18時になる前に何度目かのコーヒーを運んだ。
「社長、失礼します。コーヒーをお持ちしました。
何もないようでしたらこれで帰りますが、よろしいでしょうか?」
パソコン2台を触りながら、何か他の機材もくっ付いていた。
真はそれに夢中だ。
「ああ、いいよ。お疲れ様。」
「お疲れ様です。では………お先に失礼致します。」
見ていない真の前で深々と頭を下げた。
(男としては最低、人としてはまぁまぁ。根はいい人なのよね。
印象は最悪だったけど、この半年は配慮もされて良くして頂いた。)
「社長?」
「んー?」
「あまり根を詰めて無理をされない様に。ありがとうございました。
お昼、楽しかったです。ではさようなら。」
「ああ、気をつけて…。」
パソコンから目を離さない真を見ながら、階段を降りる前に振り向いてお辞儀をした。
そして、下で梨香と握手をして、会社の社員証を返し、お客様用のカードを受け取った。
ゲートを出た後、それを一階の受付に返した。
背伸びをしていた半年が、長かった様な短かった様な、そんな気分だった。
最初のコメントを投稿しよう!