何処が好き?

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「真、落ち着いて。石原さんはね、男性不信だ。今までも自分に好意があると何となく思えば距離を取ってきた。ただ男性不信だからじゃない。精神的病気、トラウマの所為だ。その時の場面がフラッシュバックする様に突然蘇るそうだ。頭の中にその映像が出ると、手足が震えて、治らない。酷いと身体も震えるらしい。頭痛がして息苦しくなる。」 「病気?体調不良ってそれ?男性不信がトラウマって…それあれだろ?心的外傷性ストレス、どんなストレスが掛かったって言うんだよ。」 呆然として真は聞く。 真の知っている水菜は威勢良く文句を言う、淡々と仕事をこなし改善点も要求も堂々と言う。 そんな傷があるような人間には見えなかった。 「梨香が聞いた話で、本人のいない場所で言うのはルール違反だと思うから言えない。ただね?石原さんに真が好きだと言っても信用はされない。三度、見られている事になる。」 「三度?」 「男性不信のトラウマ持ちの女性に、出勤初日からベッドで裸!明らかに行為の後。しかも誤解だっていうワードは彼女の中で最悪に近いワードなの。そしてセフレへの電話。上で何してるか簡単に想像できる。2時間耐えてる事になる。多分、彼じゃない、仕事だ…そうやって乗り切ってる。そしてとどめに誕プレを取りに来た女と、誕プレ買いに走らせたのに、バレないように気を遣って届けに行ったら最中だった事。寝ぼけてやっててもやってる事に変わりはない。ていうか、よく出来たわね?寝ぼけてて。それって、誰でもいいって事でしょ?私でも最低だと思うから!」 「最低と思われて……退社?」 「残念だけど、真。最低と思っても退社までは行かない。なぜなら石原さんにはお前はただの上司だ。病気の症状が出たんだ。 俺たちも気付かなかったけどそれで早退した。退職したいと、その後連絡を受けた。」 椅子に座りなおし、前のめりで幸人は言う。 「あのな…ただ側にいてほしい、その程度でどうにか出来る事じゃない。心の病は簡単には治らない。そこまで自分の時間を全て捨てても石原さんと一緒にいたいか?今までみたいにお前の自由気ままには生活出来ない。そんな、好きかも…くらいの気持ちで近付くのは止めろ。恋は……いつか忘れられる。」 幸人に言われてフラフラと席を立ち部屋に戻った。 ショックだった、と思う。
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