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会社に戻り、幸人に言われるがまま仕事をする。
「今日はまともに仕事してないからな…お前。」
言いながら、幸人は机の上にコーヒーを置いた。
「幸人…。 仕事はする。全力でする。だから水菜を連れ戻してもいいか。
いや、連れ戻す努力をしてもいいか?」
人が変わった様に真面目にパソコンに向き合い、真は幸人に言った。
「俺はお前と違って天才じゃない。ちょっと出来るだけのコンピュータマニアだ。会社はお前で持ってる。梨香にも苦労は掛けたくない。
お前の仕事をしてくれるなら、それ以外に何をしていても文句はない。
今までもそうだっただろ?
俺は俺の仕事、梨香は梨香の仕事。そうやって、カバーしてきたはずだ。
側に置きたいならやってみればいい。
決めるのは石原さんで、俺じゃない。けど仕事はしろ!
それから、無茶はするな。助け船は出さない。いいな?」
「了解!これ終わった。次、くれ。朝までに全部叩く。
それで、朝、水菜に会いに行く。」
データの入ったUSBを渡しながら、幸人はため息をついて言う。
「だから徹夜で会いに行くの無茶だって言うんだよ……。」
そこから真は熱中して、幸人の忠告は頭に入っていなかった。
残っていた仕事を終わらせて満足してそれを見た。
「次はウィルスソフト、いや、会社のデータベースに直で入れるのを作ろう。
会社専用。」
時計を見る。
「8時だ!」
椅子を並べて眠る幸人を起こさない様に階段から下に降りて部屋を出た。
水菜に会いに行く。
これから毎日、毎朝、顔を見に行くんだ。
水菜が来ないなら俺が行けばいい話だ。
真はタワービルから下町の風景に溶け込んで行った。
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