攻防戦、二回戦突入

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「食事処 吉」 近所の会社のサラリーマンからOLさんに人気の定食屋。 昼は混雑する。 夫婦二人でやっているが、現在奥さんが左足骨折中で、厨房の中で雑用をこなしている。 ご主人一人では調理と運ぶのが無理で、水菜はここでバイトとして雇って貰っていた。 常連さんは自分で取りにきてくれたりするし、金額にも詳しくて水菜には有難い事だった。 「いらっしゃいませ。お一人ですか?相席でも…………。」 固まってしまう。 「一人、相席でいいです。」 笑顔で真が答えた。 「スイちゃん、から定あがったよ。」 後ろから声がして返事をし、慌てて席に案内する。 「すみません、相席いいですか? こちらにどうぞ……。」 「どうも。」 唐揚げ定食を運び、ついでにお手拭きと水を出す。 「ご注文は?」 笑顔なしの知らん顔の接客。 「んー初めてだしな。水菜のオススメは?」 「は?ぜ、全部ですよ!全部美味しいんです!」 「じゃあ、水菜が食べたいのは?」 「はぁ?」 少し殴りたくなるげんこつを堪える。 (何?急に、偶然?いや、偶然じゃない。嫌がらせ?) 対抗心がメラメラ燃える。 「そうですね。野菜炒め定食はお勧めですよ?」 野菜が得意ではないと知っていて勧めた。 「じゃあ、それで!」 (はぁ?後で文句言うなよぉ〜!) 「野菜定食ひとつ。」 厨房に向かい大きな声で言ってから、知らない顔を続けた。 それから3日間、同じ言葉が繰り返された。 流石に水菜は折れた。 「いい加減にして下さい。野菜好きじゃないでしょう?」 椅子に座ると水を持って来た水菜がすぐに話しかけたので、真はご機嫌になる。 「嫌いではない。食べずに済むなら食べない方がいい程度。水菜のお勧めだから美味しいよ。今日のお勧めは?」 余裕な態度に水菜はちょっとムッとする。 「野菜炒め定食です!」 (違うの自分で考えろ!) と、思いながら言う。 「じゃあ、それで!」 笑顔の真に水菜はため息を吐き、 「すみません、野菜炒め定食、肉多めお願いします。」 と注文した。 また嬉しそうな顔の真がいた。
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