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5日目、朝早くから仕事して、午前中会議なんかもこなして、時間がずれる事もあるが真はママチャリに乗り「食事処 吉」に行く。
3日目に幸人から、何でママチャリ?と聞かれたが特に理由はなく、並んだ自転車がカゴ付きの物ばかりで、この色が気に入ったからだと答えた。
「いらっしゃい…ませ。お好きな席にどうぞ。」
昼時間が少しずれたからか、満員ではなくテーブル席は一つ空いていた。
座るとすぐにお手拭きと水が運ばれる。
「ご注文は……お決まりですか?」
半ば諦めと呆れた様な顔で聞かれた。
「お客様には笑顔でしょ?水菜の食べたい物は何ですか?」
5日間繰り返される言葉。
それでも昨日はメニューにはない、野菜炒め肉多めという注文を水菜はしてくれた。
お客様には笑顔でしょ…と言われて水菜は作り笑いをして、
「ここの生姜焼きと鯖味噌は男性のリピート率が高いですよ?」
「へぇ…。水菜はどっちが好き?」
「どっちも美味しいですから好きですけど、今日は賄いで鯖味噌を戴く予定です。」
「じゃあ、鯖味噌でお願いします。」
水菜は笑顔の真を見て、ため息を吐くが少し微笑む。
「鯖味噌定食一つお願いしまーす。」
と声を出した。
(野菜炒めから一歩前進か…な?ちょっとだけ笑ったし…。)
ニコニコしながら店の中を動き回る水菜を真はジッと見ていた。
「お待たせしました。鯖味噌定食です。」
「おお〜。美味しそう。」
運ばれたお膳を見て言うと、呆れた顔で空いている前の席にもう一つお膳が置かれて水菜が座った。
「え?」
ドキドキした。
「お昼休憩時間、頂いたんです。食べてる間は話を聞けるので…。」
「話?」
「文句でもあるんでしょう?5日間も連続で来て、まさか食事しに来てるだけなんて……ないですよね?」
いただきますと言い、水菜は食事を開始した。
「1時過ぎるとまた混み始めるんです。この15分か20分が移動とかでしょうか、少しお客様が減るんです。」
「ああ、それで休憩。」
納得して、同じ鯖味噌を口に入れた。
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