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懲りもせずその日は13時半過ぎてからに店に入った。
13時頃からまた混むと聞いていたので、少しは話が出来たらいいなという希望付き。
「いらっしゃいませ。カウンターでも良いですか?」
「はい。」
予想外に席は満員。
近くで道路工事をしているそうで交代で食べに来ていた様だった。
水菜は忙しく、水だ注文だお運びだと、狭い店内を動き回る。
(秘書では見れない姿だなぁ。………元気だな…柴犬っぽい?)
考えて待つ事1分、
「すみません、お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」
笑顔の水菜が水とお手拭きを持って来た。
「………生姜焼き定食。」
忙しいのに何が食べたいと聞くのも悪いし、昨日聞いていたしと少し考えて注文した。
水菜も注文を聞き少し停止する。
多分、また聞かれると思っていたに違いない。
それから上を向いて真の顔を見て満面の笑顔で、
「生姜焼き定食、お願いしまーす。」
と大きな声で言った。
食べ終えて会計をするレジで小さな声で話しかけてみた。
「戻って欲しい。理由もある。聞いて欲しい。時間をくれないか?夕飯どう?夕ご飯は食べるでしょ?その時間をくれない?」
少し考えてから水菜は返事をした。
「梨香さんも一緒なら…。」
「うん!梨香に聞くね。また来るね。ご馳走さま。」
攻防戦一回戦目は相手にされずに、切れた俺の負け。
でも二回戦は相手にされなくても根気よく粘った俺の勝ち。
そしてまた、ママチャリで仕事場に戻る。
るんるんしながら子供みたいに。
そこでふとある考えを思い付く。
とても大事で重要な事だ。
帰ってすぐに高橋に至急と、指示を出した。
夕方、梨香が部屋に来る。
「ねぇ、何これ?私、人妻!あんたの幼馴染27年やってるけど、食事行かないかなんて初めて聞くわ!どんな下心な訳?」
机、バン!
得意技か?と最近思う。
「幼馴染は4歳から。23年だよ。食事に誘ったのも初めてではない。
梨香の家、おばさん盲腸で入院した時、家族ごと誘っただろ?
母さんに頼まれたから…。」
仕事をしながら梨香を見ずに淡々と言う。
「ああ………!て、何を企んでいるかを聞いてるの。それに高橋から相談受けたけど、何よ?リフォームって。社長室も隣も、秘書室も、壁紙から変えるってどういう事よ。今は順調だけどね、贅沢できる会社じゃないのよ?」
「分かってる。秘書室は雰囲気変えたいだけだから、壁紙だけ、それも背後と部屋の間の仕切りだけだろ?それくらい贅沢じゃないでしょ?
梨香も好きな色選んで良いし。」
「ふむ…好きな色ね?いやいや、じゃあ、社長室は?床も変えて机も移動?
壁紙、そこまではいいとしよう。何で真の寝泊まりする部屋まで全面改装になるの!ベッドも買い替え?業者選んで呼んでってどういう事?」
「ねぇ、梨香。今、凄く繊細な作業中でさ、10分待てる?
その間に女子が好きそうなご飯屋さん、探しててよ。俺の奢りだから高いとこでもいいよ。あ、ちなみに予約は待ってね。水菜に予定聞かないと駄目だから……。」
「水菜って……。え?意味不明!いつにも増して意味不明!
でも、探す!ちょーぜつ!高いとこ探す!」
怒りながらも作業の邪魔はできず、端に置いてある一人掛けのソファに座り、自分が前から気になっていたお店のメニューを見始めた。
水菜にメールをこっそり送りながら…。
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