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「野望て、程でもないけど? ただ水菜にここに戻って欲しい。
出来れば気分良く笑顔で働いて欲しい。その為の改装。
悪いのは俺だしプライベートスペースだからこっちの部屋は自費で出すよ。梨香もそれならいいだろ?」
「まぁね?でも水菜は戻って来ると言ったの?」
「いや、まだ。指が震えてた。あれも俺の所為だよな?
知らなかったとはいえ水菜の心に傷を付けた。」
辛そうな顔で真が言うので、梨香も何も言えなくなってしまった。
秘書室に戻り水菜にメールを入れた。
『ねぇ、真とどんな話をしたの?』
少し間が空いて返信が届いた。
『特にしっかりとは話してないの。ただ戻って来ないかと言われて無理だと答えたけど…。ちゃんと話したい、みたいに言われて、食事に誘われたから二人ではちょっと…って考えて、梨香さんも一緒ならって。ごめんね?』
『ううん、こうなると無関係ではないから。正直ね、水菜が辞めた後、酷かったの。水菜がいない、水菜がいないって、ボーっとして仕事が進まないのよ。
後任に入れた高橋にも八つ当たりする始末でね。
ねぇ、二人の事だし、聞くのもどうかと思うけど、水菜は真の事、どう思う?』
『どう?急に辞めたのは申し訳ないけど、社長としては仕事も出来るしいい人だとは思う。でもそれだけ。七瀬さんの生き方と私とでは違いすぎると思う。私は遠回りでも自分で歩いて行きたいけど、彼は何か方法を考えて直進するでしょ?それがどんな方法でも…。』
『まぁ…そうかもね。』
『今の私は足踏み状態。進まなきゃと思いながら進めないでいる。
七瀬さんはその辺、理解出来てないと思うの。
今度、ちゃんと私のトラウマについても話そうと思ってる。
それで新しい秘書の方と上手く仕事してくれればいいかなって…。
辞めてまで迷惑かけてごめんなさい。』
『いいのよ。真、なんだか少し変わった気がする。
それに今回は真の奢りだから二人でいっぱい食べようね?』
『ありがとう、梨香さん。』
『そろそろ、梨香って呼び捨てにしてくれない?私は結構前から、水菜って呼んでいるのよ?』
『年上だし……。』
『いい友達だと思っているのよ?』
『じゃあ、次に会った時、呼べるように練習しておくね。』
『了解、またね。』
「いい社長かぁ…。水菜が傍にいたら、もっといい社長になれるんじゃないかしら?戻って欲しいけど、男としては………。」
ふぅ…とため息を吐き、梨香は仕事を再開した。
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