一年後

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「おはようございます。本日のスケジュール確認をさせて頂きます。」 黒のツータックのズボン、グレーのワイシャツ、水色のカーディガン。 少し長めになった髪をくるくると巻いて、バレッタで留めている。 結婚して3ヶ月、新婚旅行以外、週一日の休日を除いて真は精力的に仕事をしていた。 秘書である水菜も同じ様に…とはいかないが、家事も仕事も常に真のフォローをして、特に食事を面倒くさがる真の為にお弁当は欠かさなかった。 「ベターと新規の企業システムのお仕事が入ったそうです。後で説明に立花副社長がお見えになるそうですが、これの責任者を高橋に…と考えているそうです。」 「なぁ…水菜。新婚旅行で俺が買ったヒラヒラっとしたの、いつ着るの?」 真は手をヒラヒラさせて言う。 「新卒採用で入りましたうちの1名を梨香と相談して秘書室に配置替え致しました。午後より社長付きでお願いします。」 水菜はガン無視で続ける。 「ええ!誰?」 「倉田さんです。倉田 芳佳。ポニーテールだった子です。最初の頃。」 「ああ!あの、キャピっとした胸の大きい子!」 ぽん、と手を叩いて真が思い出したと言う。 「嬉しいですか?胸の大きい子。」 「そりゃあ、小さいより………………、い、や、そんな事は仕事には関係ないからな!」 冷た〜い目が水菜から向けられている。 梨香も二人目がお腹にいて半年後には産休に入る。 それを見越して秘書室に人を増員した。 いざとなれば高橋もフォローしてくれるが、もう一人男性を入れたいと考えている。 「秘書室に男性を入れたいと、梨香と話しまして、近く募集をする予定です。 その男性が入りましたらヒラヒラを着たいと思います。 本日は以上です。アプリ開発、なさって下さい。大きな胸でも想像して!」 ペコっと頭を下げて向きを変える。 「こら、待て水菜!何で男の秘書が入ったらヒラヒラ着るんだ? 今着ろ!すぐ着ろ!俺の前で着ろ!」 席を立ち叫ぶ。 「その発言はセクハラで変態です!」 振り返り水菜が言う。 冷たい目を向けながら…。 「俺が水菜にセクハラして何が悪い!」 言ってる事は大きな態度だが、声は小さい。 「大きな胸の倉田さんに万が一、同じ様な事を言おうものなら…。」 「なら?」 「お弁当は作りません。」 「え?」 想像以上に衝撃的な顔を見せたので、水菜の方が予想外に驚いた。 「コホン…。それと、倉田さんをプライベートスペースに入れたり必要以上のボディタッチ、もしくは彼女に迫られて仕方なく……などという事があった場合ですが…。」 変わらず冷たい目を向けて水菜は続けた。 「え?ないない。……あった場合、は?」 否定はするが、念の為に真は水菜に聞いてみる。 「速攻で家を出ます。二度とお目にかかる事はないでしょうね?」 笑顔で言う。 「水菜!すぐに男の秘書を入れろ!それで水菜はずっと俺の秘書すれば良い!」 焦って真は言う。 水菜はため息を吐く。 「ずっと秘書をしたいのはやまやまですが、少々、無理な様で…。」 と残念そうな声を出した。 「え?何で?」 「まだ先ですが、しばらくお休みを頂きます。それまでに秘書を育てますので…。」 「退職?休職?許可しない!駄目だよ!家からもいなくなる気か! 胸なんて小さくて十分だぞ!」 (そこ?今そこ来る?逆に大きさに拘ってるって思うよ?) 水菜は考えながらくすくす笑う。 冷たい目を優しい目に変えて、笑いながら答える。 「新婚旅行で買って頂いたヒラヒラは、足が冷えるといけませんので、無事に出産を終えましたら復帰の際、着させて頂きます。」 と笑顔で言った。 一時停止した真が、大きな声で叫んで飛び上がり、足を痛めたのは言うまでもない…。 そして座らせられて、横に座る水菜を抱きしめた。 「ありがとう、水菜。3人家族だ!」 「まだ先です。」 優しい笑顔で水菜は微笑んだ。 ーー 完 2019、7、30 ーー スター特典 「二人で、いい」(短編、水菜妊娠編) 続編 「一緒が、いい」に続いています。(出産、仕事復帰編) 続編2 「ガラスで…いい!」2020、2月完結致しました。
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