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むせ返る夏
……そう。私は今、彼に食べかけのそれを差し出されている。
そう、食べかけなのだ。あれだ。
これっていわゆる間接キッス? というやつだ。(某サマーセッション参照)
……これは由々しき事態である。何故ならここでこれをどのように受け取るかで彼の私に対する印象が変わってしまうからだ。このまま悩んでしまっていては彼がその事実に気づいてアイスを引っ込めてしまう。
『あっ、食べかけとか微妙か……ごめん』
などと言って。
あぁ、見える。そんな未来が見える。間違いない。どうしよう。
とはいえ喜び勇んで飛びつくわけにもいかない。それこそ変質者だ。彼に嫌われる方向一直線。一番いけない。アウト。ダメ。
やっぱり気にしてませんよ風に。さりげなーく。
……ぁぁぁああああああ、でもそれってどうなのかなぁぁぁぁぁあああああああああ。
だってだってそれってまるで意識してませんってことでしょ!? あなたのことは別に異性として意識してないんで特に何も気にしてませんよっていう、間接キス? なんのことですか? っていう! それは、それはそれでどうなの!?
「え、なに、食べないの?」
なんか若干不機嫌だよ、彼!
「た、食べます食べます! もちろんでございますとも!」
「さっさと食べろよ、ほれ」
途端、ポカンと空いた口の中に突っ込まれた冷たいソーダ味。
……そんなの聞いてない。
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