カタチ

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翌朝、気づけば彰悟はもう出勤していた。私も、大知も寝坊だ。 ……あー、だけど、いいか。そんな日も。見送れなくても。だって、夫婦だから。 冷蔵庫を開けると、大きな箱が入っていた。何? 中身はLindtのリンドール。アソートでたっぷり入ってる。え、これ、めちゃめちゃ高いやつ。 “1日1粒”のメモが添えられてる。 仕事辞めたのだって、私の希望だ。大知の成長を見逃したくなかったから。そして、それが可能なほど……彰悟が働いてくれるから。 目に見えている物が、全てではない。 幸せだ。ジーマが美味しかった頃から、リンドールの1粒に癒される今日まで。 失くした物はある。だけど、手に入れたものの方がきっと。 大学時代(あのころ)には、魅力的に見えなかった。 今は……。目に見えないけれど、ここにはたくさんの、何かがある。 髪を梳いて、まとめ、かざりをつける。化粧も少し。 「かーいー」 小さな大知なりの称賛。1歳児は、結構気づく。言えるかな……彰悟に。 頑張って、言えるかな。いつの間にか、頑張らないと言えなくなった。 『ありがとう』 それから 『これからも、よろしく』 ────end
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