序章   『十種神宝』

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自らの読みの甘さに(ほぞ)を噛む。 隷属(れいぞく)しろという使者を、昨日追い帰したばかりだ。 力に訴えてくるにしても徴用、編成には時もかかる。 (いくさ)支度はこれからすればよい、と考えていた。 攻めてくるとしても隣国の出雲からだと決めつけていた。 かつて国の歴史さえも大和に奪われた出雲は、わが国に友好的である。 近年、移住してきた民も少なくない。 そのような動きがあれば危険を冒してでも密使を派遣してくれるだろう、と。 ――大和に媚びなければならない理由があったのか。 あるいは、その隣の伯耆国から送り出してきたのか。 大和の大王(おおきみ)が、出雲国と伯耆国に課した兵役数はそれぞれ一軍団。 数は千。 農民を徴用しての数である。 国の命運をかけた戦いになることはあるまい、と高をくくっていた。
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