第二話  『やんごとなき姫君』

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「なぜ殺さぬのです」 山賊のことを言っているのだ。 確かに、半数以上が生きている。 だが、人間は弱い。 骨を砕き、突き刺さった矢を抜いてくれる者も、手当をしてくれる者もいない。 このまま血を流し続け、大方の者は明日の朝までには(むくろ)になっていよう。 ましてや抜いたところで、この季節である。 傷口は化膿し、七転八倒した挙句、おのれの所業を後悔しながら、あの世に旅立つだろう。 仕返しされるのではないかと言う恐怖や殺された従者の仇を討ちたいという思いもあるのだろう。 が、それにしても気の強い姫である。 ――ふと、人の気配を感じ、山の斜面に目をやった。 だが、そこに人の姿はなかった。
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