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そもそも身分のあるものが移動する際には牛車や輿、馬を使う。
往来を歩くのは恥ずかしいとされる。
普段であれば、そのような衣の用意はしていない。
迎えを呼ぶのは朝になる、と男が告げてきた。
――明日のことなど考えられなかった。
見栄を張ったものの、自分の足で歩いたのは二十間もなかっただろう。
峠道を下るものと思い込んでいたが、男は山の斜面に足を踏み入れたのだ。
普段履かない緒太の緒が指の間に食い込み、こすれ、食い込んだ。
さらには、木の根を踏んで足首をひねってしまったのだ。
足を痛めて動けないと言うと、男はため息をついた。
それでも、わたしを背負子に乗せるため薪をおろし、葛籠をわたしの頭上に載せられるよう工夫した。
薪にいたっては腰にさげていた縄で背負子の横に器用にくくり直した。
なんともいびつで巨大で重量感あふれる飾り物が出来上がった。
さらに、わたしの重さが加わる。
しかし、男はいともたやすく担ぎ上げた。
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