第三話  『草の庵』

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「あれはあれで面白いのだが」と、まるで見世物でもあるかのように返してくる。 先ほど襲ってきた山賊は十人はいただろう。 一人取り逃がしたとは言え、それを瞬く間に退治するなど、人の仕業とも思えなかった。 この男こそ、その類のものではなかろうかと今更ながら不安に襲われた。 と、男の足が止まった。 慌てて身構えたが、そうではなかった。 巨大な岩が立ち塞がっていたのだ。 男の様子から、目的地に着いたのだと見当がついた。 右手に回ると、崖らしき場所にでた。 背負われたまま、崖を伝うように道ともいえぬ足場を進む。 夜で幸いだった。明るい刻限であれば大騒ぎしていたであろう。 二間ほど進み、岩と岩の狭い隙間をくぐり抜け、登っていくと柵らしいものが行く手を遮る。 それを通り過ぎると竹林が現われた。 その先に大きく突き出た大岩が見える。 岩下に屋根と壁を兼ねたような茅葺(かやぶき)の粗末な納屋のようなものがおさまっていた。 大岩の上から張り出す松の枝が、その下にあるものを覆っている。 まるで、ここを何者からか隠すかのように。
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