序章   『十種神宝』

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兵団の長となる兵部卿、あるいは兵部大輔が海を渡る前に、わが法力で倒せばよいのだ。代理を立てれば同様に倒す。 そこまでやれば、わが国の呪力に恐れをなし、(ほこ)を収めるだろうと。 それがどうだ。 大和の軍勢は、すでに上陸し終わっている。 しかも、その兵力は五千を下るまい。 迎え撃つどころではない。 この国の老若男女すべてを集めても、あの軍勢の数におよばないだろう。 (おさ)に立てられ九年。 軍費や間諜に税を費やすよりも、田畑を開墾し道を整備し、民を富ませることを優先させてきた付けが回ってきた、ということだ。 占いに長けた者を育てられなかったこと、招聘(しょうへい)できなかったことを後悔した。 もっとも、それが出来ていたところで結果は変わらなかったかもしれない。 戦は一人の英雄の時代から数の時代に移りつつある。 大和側とて、われらの呪力を承知で攻め寄せてくるからには、数倍、いや、少なくとも十倍の術者を揃えていよう。
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