第四話  『疫病神』

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第四話  『疫病神』

【義守】 納屋の前で姫をおろし、背負子をおろす。 何度も往復して採ってきた薪は、納屋の横の隙間だけでは収まりきらなかった。 戸口を残して手前にも積み上げた。 その上に背負子に括り付けてきた葛籠を乗せる。 重さから反物であろうと見当をつけた。 訪問先への進物だろう。 盗賊どもの狙いはこれだったのだろうか。 納屋から五間ほど先の家の戸口で、 「薪を採ってきたぞ」と、声をかける。 家は、幅四間、奥行二間。 洛外の一般的な百姓の家と変わりはないが、山奥に住む民の家としては大きいほうだ。 もちろん、こちらも納屋同様の造りである。 だが、このような場所で、どうやって生計を立てているのだろう。 皆目見当がつかなかった。
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