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霞んだ赤
おぼつかない足取りで夜の街を彷徨う。瞼の重力をいつもの5倍は感じ、首がゆっくりと前後左右に揺れている。こんな状態でも次のアルコールを探している自分が恐ろしくもあり、心配にもなる。
眉をひそめて霞む視界でなんとか歩いて行く。大通りから外れた小道には、店どころか人気すらない。
「この辺りには無いのかなぁ、……おっ、あれはもしかして!」
薄ら前方に赤くて丸いものを吊るした店を発見する。これは、風情のある飲み屋の証、赤提灯ではないか?
人気の少ない小道に佇む風情のある飲み屋。
これだけの条件が揃っていて名店でないはずがない。
俺は期待に胸を高鳴らせながら戸口に手をかけた。
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