濡らす陽

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濡らす陽

絶望の陽に濡れる。 前髪を滴り落ちた光が、渇いたアスファルトに染み入る。 何を探すか前行くカラスに導かれるように。 陽を浴びて艶めく黒にはエメラルドがあり、アメジストがあり。 けっして濡れることなく、埋もれてしまうこともなく。 その黒で傘を作ったならば、僕も濡れずにいられるだろうか。 ひとときでも、寒さに凍えることもないだろうか。 そして、お前のように陽を享受できるだろうか。 絶望の陽に濡れながら、僕はカラスに導かれる。
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