わんわん消防隊

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 実況見分になった現場では、プラスチックが燃えたような、鼻をつく匂いが空気を淀ませていた。  消防士たちは火元となったゴミを中心に、円陣のようになった。そして、それぞれが頭を巡らせる。  火災原因は、ある屋内犬が火のついたローソクを、加えて外に飛び出したのだ。逆に、通報したのは、近所のどの犬かは、時を待たずに分かる。  ICチップの記録でだ。マンション隣の一軒家では、窓越しに犬が遠吠えしていた。  飼い主経由で、犬には感謝状と高級犬缶十個が贈呈される予定だ。なお、火災を発見した犬の飼い主は、寝ていただけなので、消防署からは何ももらえない。しかし、近隣住民からの、飼い主への感謝は、モノには変えられない価値がある。  消防士のなかに、消防士になったばかりの新人隊員がいた。通報犬(つうほうけん)へ、笑顔で手を振っていた。そして、ヘルメットにある、通信スイッチに触れる。60歳近い隊長に無線で質問をした。 「全員のヘルメットに、常時撮影用カメラがついているのは、どうしてなんですか?」 「俺が消防士になった頃は、現場の状況がリアルタイムで通信指令室、今は指令センターだね。そこに伝えるためだったよ。最近は国の方針で、現場の実況検分にも使ってくれだって。国の予算で全員がつけるんだとさ」
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