たばこ

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 彼と出会って二度目の、春が来た。  あまり自分から連絡をよこさない彼から「話がある」とメールが来た。指定された待ち合わせ場所は、付き合おうといわれた、あの喫茶店だった。  普段なら嬉しいはずの連絡に、なぜか胸騒ぎがして、学校が終わるとすぐに急いで喫茶店へ向かった。彼はもう、席についていた。私を見つけると何とも言えない表情をして、それから手招きをした。席に着くとすぐに、彼は口を開いた。 「――ごめん。別れよう」  私は、なにも、言えなかった。なにも、聞けなかった。言いたいこと、聞きたいこと、本当は沢山あるはずなのに。ただ固まっている私に「本当にごめん」とだけ言ったあと、彼は私を置いて店を出た。  ひとりになってようやく、涙が溢れてきた。一度溢れ出した涙は、止めることなど到底できなかった。彼に戻ってきてほしいと、それだけを思った。
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