七月十三日

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「友香ちゃんは? 煙草は?」 「え? 私は全然。みんなと違ってお酒も飲まないし……それに、もう会わない事にしたの。固定客見つかったからって言ったらバイバイって。そんなもんだよ」  つまり、僕がこうして繋ぎ止めておく限りは罪の巣窟には入らないわけだ。  売春という罪をこうして今日も重ねるのなら、それはいけない事なのかもしれないけれど、その罪は僕にある。  いくつかの店を回って水着を試着したけれど、とうとう好みのものが無かったらしく、また後日という事になった。  当初の僕の不安は拭い切れた。何しろ、水着姿を見ただけでジーンズの前面が張っていたのだから。  僕が『女子高生』と街を歩くのは彼女が初めてだった。  憧れでもあった高校生当時、好きな人はいたものの、その思いも伝えられないどころか話し掛ける事もままならないまま、卒業を迎えてしまい『高校生』で付き合うという事は叶わない夢になった。  駅までの下校や、地元の花火大会、制服姿とは違う私服姿。  そんな煌めくシチュエーションは、まさに光となって消えて行ったのだ。
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