七月五日

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 上映時間の十六時五分の十五分前に待ち合わせをしたけれど、その友人との約束を終えた彼女『友香ちゃん』は更に十分前にやって来た。  まるでヴィンテージ物のように色褪せた加工のショートサロペット、オフショルダーの黒いカットソーに、ボリュームのあるスニーカー。 ほんのりと明るい髪は、ポニーテールになっている。 「来るの早くない?」 「時間あったから。チケットは忘れていない?」 「当たり前じゃん!」  特典目当てで前売り券を買ったらしい彼女は、チケットを何枚も持っている。その全てを僕と観るわけではなく、時間があればフラッと観に行けるというわけだ。  これは昔僕が千葉に住んでいた頃、某夢の国の年間フリーパスを持っているお陰でフラッとご飯を食べる為だけに入園出来るという事に似ているかもしれない。  待ちきれない様子の彼女は館内に入るや否やグッズ売り場に直行した。  パンフレットやグッズを眺めては財布の中身を思い出していた様子だったけれど、その表情から察するにあまり状況は良くないようだった。
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