七月五日

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「欲しいものがあったら言って良いんだよ?」 「でも……」 「気にしなくて良い」 「じゃあ……パンフだけ」 「他は良いの?」 「通販があるから。その時までにお金やりくりしてみる」 「わかった。じゃあ今日はそうしよう」  お金のやりくり……バイトの事だろう。通販という事は少なくとも支払いは翌月になる。バイトのシフトを増やせば支払いも不可能では無いという事だ。  場内はほとんど女性客が占めていた。公開初日という事もあって夕方の回でもまだ空席なんて皆無だった。  寝てしまうかもしれない……なんていう心配は杞憂だった。  隣を見れば友香ちゃんが目を輝かせている横顔があるのだから、目も覚めた。  映画を観る人間には二種類存在する。  エンドロールを最後まで観る派と観ない派。  僕も友香ちゃんも前者だし、なんなら後者の人間が後悔するように全ての作品にエンドロール後に何かあるべきだとさえ思っている。
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