七月五日

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 お湯が溜まってジェットバスを堪能している僕を、友香ちゃんは微笑ましく見ていた。 「気持ち良いの? それ」 「マッサージとか行きたいんだけどねぇ……結局、一回じゃ治らないからね。それに、気を遣ってしまって」 「気を遣うって?」 「この人達が疲れたらどうするんだろう。スタッフ同士でマッサージし合うのかな? 最後の人はどうするんだろう……とかね」  友香ちゃんは一瞬キョトンとした後で盛大に笑った。 「お……おかしいかな?」 「それでお金貰って生活してんだから良いじゃん」 「だけど人間だもの疲れるさ」 「パパは優し過ぎなんだよ。ま、それが良いとこだけど」  『パパ』……友香ちゃんが決めたルールだ。  例えば、さっきの映画館やファミレスでそう呼べば周囲は親子と思う。仮に十七の少女が四十のおじさんを名前で呼んでいたら一気にそこに向ける目は変わるだろう。  という事を想定したルールだった。  優しいというよりも小心者なだけでもあると否定したかったけれど、それは友香ちゃんのフォローを否定する事にもなるのでやめた。  
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