七月五日

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 十五分のジェットバスの稼働時間が終わり、お湯が溜まるまでの時間だったりを含めれば三時間という制約の中の六分の一が終わった事を証明された。  友香ちゃんは何も言わずに隣で三角座りで、この後の流れを待っていた。  ここに来ることになったのは僕がきっかけでもあるし、年上でもあるし男でもあるしとリードする理由しかないのは重々承知の上だが、いかんせん経験の無さがそれを難しくさせていた。  僕が過去に恋人になったのは一人だけだし、他に性欲を発散させる為だけの関係なんて言う人もいない。  つまり、四十歳にして友香ちゃんが二人目だ。  そんな僕にリードするだけの度胸は無かった。  なにしろ、初めての時だってどうだったか思い出してみれば、いちいち敬語で一つ一つ確認するような間抜けぶりだった。  さてどうしようかと、もう一度思案する事にした。  年上の男らしく堂々としなければいけない。その答えを探しているうちに、先に覚悟を決めたのは友香ちゃんの方だった。
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