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翌日、千堂が会社に行くと、同僚の先島というOLが駆け寄って来て
「森山さんの車が見つかったんだって!?」
驚いた顔で、そう言った。
森山和義も同僚で、1ヶ月くらい前から会社に来なくなり、家族により捜索願いが警察に出されていた。だから、会社にも刑事が来て1人ずつ聞き取りをした。
「で、森山は?」
「まだ見つかってないけど、山狩りを始めるみたいよ?」
「山狩り?」
「どっかの山の、入山口に有ったんだって」
「ふーん。山狩りって、犯人じゃあるまいし。捜索だろ」
「どっちだって良いわよ。ーーやっぱ、自殺かしら? 森山さんなんか、悩んでる感じだったもんね?」
森山は仕事でミスを犯して落ち込んでいたのは確かだった。
とは言え、単純な発注ミスで、首が飛ぶような取り返しが付かない程の物でも無かった。ただ、人の悩みの大きさは、人それぞれだ。
千堂はそんな事を考えながら、自分のデスクに着いた。
日本のどこかの山には赤い鳥居があり、その先は誰も知らず。
鳥居を潜った者は2度と帰って来ない。
そして、その事に気付く者も殆どいない。
知らぬ間に誰かが消えて、それっきりだ。
終わり
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